あの企業のITシステムはどんな思想や方針のもとで設計されているのだろう? どんなリーダーがどのような運用体制のもとマネジメントをしているのだろう?
AnityAが運営するメディア、Darsanaでは、そんなIT部門の人ならだれもが気になるIT施策の具体的な話を話題の企業にプレゼンテーションしてもらうイベントを実施しました。
今回、登壇したのは、時代のニーズに合わせてビジネスを拡大し、2006年に上場を果たした創業26年のWebサービス企業、株式会社MIXI。はたらく環境推進本部コーポレートエンジニアリング部 部長を務める加藤徳英氏とメンバーの秋元佑一郎氏に、MIXIのコーポレートIT部門の歴史と役割からシステム環境、ITアーキテクチャ運用体制に至るまで、幅広くお話しいただきました。
動画記事の前編では、加藤氏と秋元氏が以下の6点についてプレゼンテーションする模様を動画でご紹介します。
・IT施策の歴史(現在に至るまでのIT施策の歴史)
・ITアーキテクチャ設計と運用体制(技術スタック、ソリューション)
・IT施策を考える上で大事にしていること(方針)
・現在、うまくいっている施策
・これから手がけていきたい施策
・喫緊の課題と必要な人材像
MIXI「はたらく環境推進本部」の組織と事業領域
多角化する事業とグローバル展開
MIXIの事業は現在、スポーツ、ライフスタイル、デジタルエンターテインメント、投資の4つの柱で構成されています 。 特にデジタルエンターテインメント事業の「モンスターストライク」は、累計収益が1兆円を超えるという、国の予算規模に匹敵する巨大な事業へと成長しています 。また、家族アルバム「みてね」は海外ユーザー比率が30%を超えるなど、コーポレートITとしてもグローバルな視点が不可欠なフェーズに突入しています 。
ハイブリッドワークとコミュニケーションを支えるオフィス
2020年に渋谷へ移転した新オフィスは、単なる「働く場所」ではなく「コミュニケーションを加速させる装置」として設計されています 。 コロナ禍の影響で移転直後は利用が制限されましたが、当初からハイブリッドワークを前提としており、現在では出社率がピーク時で7〜8割に達することもあります 。社内食堂やカフェスペースなど、社員が「集まる理由」を作る設備が、強固な組織文化の形成に寄与しています 。
「はたらく環境課」の歴史:お役所仕事にしないための決断
「統制」ではなく「パフォーマンス」への貢献
「はたらく環境課(はた環)」というユニークな名称は、2014年に当時の経営陣との対話から生まれました 。 「管理部門特有のお役所仕事はしない」という決意を込め、ITを統制の道具ではなく、従業員のパフォーマンスを最大化するための「環境」と定義しています 。組織上は「グループ」という単位ですが、あえて自ら「課」を名乗り続けることで、その親しみやすさと現場主義を象徴させています 。
ITリテラシーの高い現場に寄り添う
MIXIはエンジニアが多く、従業員のITリテラシーが非常に高いことが特徴です 。 そのため、「はた環」では過度なガバナンスで縛るのではなく、「最後まで寄り添い続けること」を最も大切にしています 。M&Aによる子会社の参画から、事業の譲渡や撤退に至るまで、システムの「入り口から出口まで」を泥臭くサポートし続けることで、現場からの絶大な信頼を勝ち取ってきました 。
アーキテクチャの現状と組織再編の裏側
現場主義がもたらした「副作用」
現場への柔軟な対応を優先してきた一方で、いくつかの「副作用」も生じました 。 個別の要望にコツコツと応え続けてきた結果、システム間の自動化や共通基盤の構築といった「大きな施策」が後回しになっていたのです 。現在でも従業員のアカウント管理をExcelで行っているなど、属人的かつ手作業による運用が限界を迎えつつありました 。
「運用保守」と「エンジニアリング」の分離
この状況を打破するため、2023年10月に大きな組織再編を行いました 。 日々の差し込み依頼やトラブル対応を担う「サービス部」と、中長期的なアーキテクチャ設計や自動化を担う「エンジニアリング部」に分けたのです 。「運用を理由に業務改善から逃げられない組織」へと構造を変えることで、攻めのIT投資を加速させる狙いがあります 。
これから手がけていく「4つの重点施策」
エンジニアリング部の秋元氏は、今後注力する施策として以下の4点を強調しました 。
- SOC(セキュリティオペレーションセンター)の組織化 これまでのボランタリーな運用から脱却し、組織的な継続性を担保する体制を構築します 。
- サプライチェーン共同ポリシーの見直し 業務委託者のBYOD(個人端末利用)方針や、海外拠点との安全かつスムーズな共同作業環境を再定義します 。
- データ基盤の構築とアカウント連携の自動化 「器がない」という現状を打破するため、アカウント情報のデータベース化を推進。人手を介さず、各種SaaSへ情報が反映される「ToBe」の姿を目指します 。
- 生成AIの適用による底上げ 事業競争力と採用力の維持のため、全従業員が生成AIを使いこなせる環境を整備します 。
まとめ:信頼という貯金を武器に「次」へ
MIXIの「はたらく環境推進本部」は、単なる管理部門の枠を超え、事業と人にどこまでも寄り添うことで、社内に強力な「信頼貯金」を作ってきました 。 今後はその信頼を基盤に、長年の課題であったシステムの自動化やデータドリブンな環境整備へと舵を切ります 。「崖から落ちないための最低限のガードレール」と「最高のパフォーマンスを発揮できる自由」を両立させる、MIXIの新たな挑戦から目が離せません 。
動画インデックス
・MIXI 加藤氏、秋元氏プレゼンテーション
MIXIはたらく環境課の全てを見せます!
- 事業領域と主要サービスについて【00:00:56】
- オフィス紹介と働き方について【00:02:52】
- 図で見る組織とコーポレートIT体制【00:05:52】
- 数字で見る「はた環」こと「はたらく環境推進本部」【00:06:54】
- 使用しているツールと選び方について【00:07:54】
- グループ会社との関わりについて【00:10:35】
- はた環の歴史【00:11:34】
- はた環の特徴と副作用とは【00:15:57】
- はた環が大事にしていること【00:17:57】
- 運用保守や従業員からの信頼について【00:21:58】
- 業務領域の現状とあるべき姿について【00:23:10】
- 運用保守と企画設計で部署をわけてみた【00:24:17】
- これから進めていきたいと考えていること【00:25:18】
- システムアカウントの流れとToBe【00:28:36】
- 今後の課題とは【00:30:28】
- 本日のまとめ【00:34:34】
登壇者プロフィール

株式会社MIXI はたらく環境推進本部
コーポレートエンジニアリング部 部長
加藤徳英氏
2006年12月ミクシィ(現MIXI)へ中途入社。前職ではインターネットプロバイダーにてネットワークエンジニアを経験。SNS『mixi』のインフラ・購買を担当し、2014年よりはたらく環境推進本部 社内IT室に。2020年、部室長に就任。

株式会社MIXI はたらく環境推進本部
コーポレートエンジニアリング部
秋元佑一郎氏
SIerでのプログラマー、システムエンジニア、事業会社の社内SEを経て、2018年にミクシィ(現MIXI)入社。決裁ワークフロー/会計システムの入替支援、本社移転業務、全社で利用するSaaSツール導入、管理関連業務、PCなどの端末管理、SOC他の取りまとめに従事。2020年7月からマネージャー。

