コロナ禍を契機に、これまでにも増してDXの機運が高まっています。IT部門にとっては大きなチャンスであり、このムーブメントを企業の成長に生かさない手はありません。ただ、このチャンスを最大限、生かすためには、「自社にとってのDXの意味」を考え、「その中で自分が果たすべき役割」を明確にする必要があります。
DXとはいったい、どのような未来を実現するための取り組みなのか、それを実現するために、企業のIT部門、ITコンサルタント・SIer、プラットフォーマーは、それぞれどのような考えのもと、どのような役割を果たしていけばいいのか──。
本記事では、AnityAが開催したイベント「またとない変革の好機『DX祭』の波をどう乗りこなすか 武闘派CIOの友岡氏と考える会」の模様を動画でご紹介します。
前編では、武闘派CIOとして知られるCIO Loungeの友岡賢二氏が、経産省の「DXレポート」 をベースに「真のDXがもたらすビジネスモデルの変革」について解説するプレゼンテーションの模様と、日本マイクロソフトのクラウド&ソリューション事業本部でセキュリティ分野を担当している山本築氏、AnityA代表取締役の中野仁を交えたディスカッションを動画でご覧いただけます。
CIO Lounge 友岡氏のプレゼンテーション「経産省のDXレポートで読み解く“真のDXの姿”」
友岡氏のプレゼンテーションでは、経済産業省のDXレポートが提示する3つのフェーズに沿ってDXの本質が解説されました。
DXレポート1.0:2025年の崖とDXへのシナリオ
2018年9月7日に発表された最初のレポートでは、DXが進まない企業は2025年までに最大12兆円の経済損失を被る可能性があると警告しています。DX実現には、古いシステム(レガシーシステム)が大きな障壁となる点が指摘されました。このレポートは「2025年の崖」という言葉で大きな話題になりました。友岡氏は、このレポートは、DXを推進するために情報システム部門の予算を増やしたいIT担当者にとって、非常に使いやすい資料だったと述べています。
DXレポート2.0:レガシー企業文化からの脱却とDXの本質
2020年12月28日に発表された第2版では、DXは単なるITシステムの問題ではなく、企業文化そのものの変革が重要であるというメッセージが強く打ち出されました。ハンコや紙の書類といったアナログな業務プロセスがリモートワークの妨げになるなど、コロナ禍で顕在化した課題が背景にあります。DXレポート2.0は、企業がデジタルプラットフォームを形成し、レガシーな企業文化から脱却することを促す内容でした。
DXレポート2.1:エコシステムへのダイブ
2021年8月31日に発表された最新版は、デジタル庁の設立に合わせて出されました。このレポートでは、企業が自社内だけでなく、外部の企業とも連携する**「エコシステム」に積極的に飛び込んでいくことの重要性が説かれています。DXの推進には、既存事業の深化と新規事業の探索を同時に進める「両利きの経営」**が不可欠であること、そして、それを実現するために、APIを活用して自社のプロセスを外部に開放していくことが鍵となると強調されています。
議論で語られた「真のDX」の姿
プレゼンテーション後のディスカッションでは、友岡氏、日本マイクロソフトの山本氏、AnityAの中野氏が、DXをめぐる現実と課題について語り合いました。
テクノロジーの進化と企業の対応
PCやインターネット、クラウド、APIといったテクノロジーは、およそ10年周期で普及の波が訪れます。友岡氏は、2000年代に解決しておくべきだった課題(ブラウザ上で業務アプリが動くようにすることなど)がいまだに残っている企業が多いと指摘しています。また、AIの活用によって、人間が担当していた定量的な意思決定が自動化され、人間はより創造的な業務に集中できるようになる「DX with AI」の時代が来たと述べています。
内製化とベンダーとの関係性
日本の多くの企業では、ITシステム開発をベンダーに「丸投げ」してしまう傾向があります。しかし、DXを成功させるためには、企業側が自らテクノロジーを理解し、主体的に動ける力をつける**「内製化」が不可欠です。友岡氏は、ベンダーは単なる開発者ではなく、顧客のビジネスを深く理解し、共に新しい価値を創造する「共創」**のパートナーになるべきだと語っています。
成功への鍵は「まずやってみること」
ディスカッションでは、小さな成功を積み重ねていく**「グロースハック」**の考え方が紹介されました。まずは小さく試して、うまくいったら横展開していくというプロセスが、DXを前に進める上で重要であると強調されています。また、過去の成功体験に固執せず、データに基づいた仮説・検証を繰り返すことが、これからの企業が10年先を生き残るために必要不可欠であると述べられました。
動画インデックス
CIO Lounge 友岡氏のプレゼンテーション「経産省のDXレポートで読み解く“真のDXの姿”」
-【00:03:47】2018年9月7日DXレポート…2025年の壁とDX実現へのシナリオ
-【00:10:05】2020年12月28日DXレポート2…レガシー企業文化からの脱却とDXの本質
-【00:16:06】2021年8月31日DXレポート2.1…エコシステムへダイブするために
-【00:19:34】両利きの経営とは
-【00:21:44】システムのモダン化で行うべきこととは
-【00:23:12】グロースハックのプロセスのススメ
-【00:24:34】2つの次元の異なる課題を同時に扱わなければならない
-【00:25:34】内製化を目指すために。ベンダーとの関係は
-【00:26:18】10年周期で訪れる変化と2000年代に解決すべきだった課題
-【00:28:08】スケールフリーネットワークの企業ITへの適合について
CIO Lounge 友岡氏×日本マイクロソフト 山本氏×AnityA 中野仁鼎談
-【00:32:52】DXレポート2.1で捉えたこととは
-【00:35:32】プラットフォーマーが成功している?!DX後のビジネスについて
-【00:39:03】APIの話がわかるCIOは生き残るために必要!
-【00:47:48】データ解析と試行錯誤で10年先を生き残れ!
-【00:51:46】意思決定をAIへ……DX with AIの時代がきた
-【00:57:30】マイクロソフトがカルチャー変革を成し遂げられた理由
-【01:00:51】DXの流れの変化の中でそれぞれの立場で思うこと・期待値とは
-【01:09:05】ベンダーの価値の出し方、どこにプロットしていくのかが重要
登壇者プロフィール

NPO法人
CIO Lounge
友岡賢二
企業のDXを加速するため関西の製造業現役CIOやOBが集まって結成したCIO Loungeメンバー。悩みを抱える企業に寄り添い無償ボランティアでコンサルティングを実践中。本業では製造業のCIO/CDOとして、コミュニティでは「武闘派CIO」として多方面で活躍。

日本マイクロソフト株式会社 クラウド&ソリューション事業本部 サイバーセキュリティ&コンプライアンス統括本部
クラウドエンドポイント技術営業本部 本部長
山本築
ィの技術営業として活動し、2018年より働き方改革推進担当に着任、働き方改革をセキュリティの側面とも合わせながらユーザー企業の業務改革を支援している。

株式会社 AnityA(アニティア) 代表取締役 中野仁
国内・外資ベンダーのエンジニアを経て事業会社の情報システム部門へ転職。メーカー、Webサービス企業でシステム部門の立ち上げやシステム刷新に関わる。2015年から海外を含む基幹システムを刷新する「5並列プロジェクト」を率い、1年半でシステム基盤をシンプルに構築し直すプロジェクトを敢行した。2019年10月からラクスルに移籍。また、2018年にはITコンサル会社AnityAを立ち上げ、代表取締役としてシステム企画、導入についてのコンサルティングを中心に活動している。システムに限らない企業の本質的な変化を実現することが信条。

