【動画】DXを推進するIT担当者は「ビジネス視点」で語れ  「2025年の崖レポートの誤解と真実」をCIO Loungeの友岡氏に聞く(後編)

 2018年9月に経済産業省がリリースした「2025年の崖レポート」(「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」)。IT業界を中心に大きな話題となったこのレポートだが、「内容が誤解されている面がある」と指摘するのが、武闘派CIOとして知られるCIO Lounge友岡賢二氏だ。

 2025年の崖レポートは、どのように誤った読み方をされており、本来、経済産業省が伝えようとしているのは何だったのか──。前編に続く後編では、DXを推進するための体制づくりと参加者からの質問に対する回答を紹介する。

目次

動画インデックス

・ビジネス課題をITで解決するために

 -DXを推進するための体制づくり【00:00:57】

・Q&A

 -社長にIT導入を理解してもらうために良い方法はあるか【00:17:18】

 -海外、国内企業のDX対応進捗は【00:31:19】

 -方針を示せないマネジャーに一般社員はどう対応すればいいのか【00:32:53】

 -DXを進める上でのポイント【00:38:30】

 -今、一番駆逐したいことは【00:40:13】

DXを推進するための体制づくり

DX推進における体制や組織設計は、プロセスとITの両者をつなぐ重要な要素となる

組織の規模に応じた戦い方の違い

会社の規模やステークホルダーの数によって、DXの戦い方は全く異なる

  • 中小~中堅企業(売上1500億~2000億円程度まで): 事業そのものが複雑でなく、社長と「二三脚で動かしていける」ような会社では、トップダウンが聞きやすい 。
  • 大規模組織(数兆円規模): 事業そのものが全く異なり、顧客のニーズ(Who、What、How)が違うものが同じ会社に複数存在している状態 。このような組織では、実質的に「会社が何社もあるような状態」であり、一つのやり方でDXを進めようとすると本質を見失う 。

DX推進の基本戦略:「山登り」

大規模で事業が多岐にわたる組織では、全社一律でDXを進めるのは困難であるため、「山登り」の比喩で戦略を考えることが有効である

  1. 「山」の特定: 自分が関与するステークホルダーの中に「いくつ山があるんだ」と認識する 。ここでいう「山」とは、顧客のニーズ(Who、What、How)が異なる事業ごとの領域を指す 。
  2. オーナーの特定: 全体のオーナーは社長(CEO)だが、一つ一つの山にはオーナー(マーケティング責任者や事業部長など)が存在する 。
  3. アプローチの絞り込み: 全ての山を一度に攻めるのは無理なので、まずは一つの山に絞ってアプローチする 。
  4. 社内キーパーソンの活用: 意思決定が曖昧な組織でも、「この人が言っているんだったら間違いない」という「信用の大きさ」を持つキーパーソンがいる 。実質的にそのトップが意思決定したような格好でも、コンセンサスを作り上げる過程でそうしたキーパーソンを活用することが重要である 。

短期間での成功体験の積み上げ

DXを推進する担当者がまず集中すべきは、短期間での成功体験の積み上げである

  • ターゲット: 組織の外にいる「お客様」に対し、どのような変革をもたらすのか(ドラッカーの「成果は組織の外に現れる」)を本質として考える 。
  • 変革の提示: 「お客さんから見たときには、これよくなったね」という何らかの変化を短期間で実現する 。
  • クイックな実行と撤退: 成功体験がどうしても必要であり、早く失敗し、早く撤退することが重要 。半年かけて結果が出ないのはダメージが大きいが、「3日で駄目でした」なら傷もつかない 。
  • 信頼の獲得: 成功事例を積み上げていくことで、社内での信頼が高まり、自身のロール(役割)とレスポンシビリティ(責任)が積み重なっていく 。

Q&A

社長にIT導入を理解してもらうために良い方法はあるか

IT担当者が「社長にITを理解してもらおうと思っている」こと自体が問題であり、社長はITを理解しなくていいという前提に立つべきである

  • ビジネス視点で語る: 社長は「儲かる話」や「お客さんが喜ぶ話」が好きなので、ITの話ではなくビジネスの話をすべき 。
    • (例)「クラウドを理解してくれない」と悩むのではなく、クラウドを利用して「繋がってない機械を遠隔で見えるようになりますよ」という具体的な成果を話す 。
  • コスト・リスクを「自分化」させる: セキュリティやガバナンスなどのリスク型の施策を説明する際は、抽象的な話ではなく、リスクが顕在化した場合の具体的なイメージを社長に持たせる 。
    • (例)「私と社長でフラッシュライトを浴びて、お辞儀をしながら(謝罪会見が)全国に流れるわけですよ」という絵をイメージさせると、社長はそれを避けたいと考え、自分事として判断する 。
  • コミュニケーションの原則: 「相手が聞きたいこと」や「相手が理解できること」を喋るべきである 。
    • 相手の目線で自分を眺める、すなわち「幽体離脱してその人の頭の中に後輩って」「相手の神経系統に入り込んで相手が何を感じるか」を自分で感じるくらいにシンクロする感覚が重要である 。

海外、国内企業のDX対応進捗は

国内の親会社でDXを推進するのが困難な場合、海外のグループ子会社でDXの取り組みを行うのが一つの戦術となる

  • 海外での利点: 失敗したときの日本国内へのダメージが少なく済む 。
  • 戦術的なアプローチ: 本社を動かすのが困難な場合、子会社の中で困っている会社に本社サイドから資金を出し、「実験体」としてモデルやアーキテクチャを固め、それを本社に持って帰る 。これは、親会社で進める際の抵抗や「地獄のような今だいたい」を避けるテクニック(辺境戦略)でもある 。

方針を示せないマネジャーに一般社員はどう対応すればいいのか / DXを進める上でのポイント

上司と対立する場合でも、自分の権限と責任の中で結果を出し、信頼を積み上げることが最優先となる

  • 権限内の行動に集中: 常に「自分にはどこまでの意思決定ができる権限があるのか」を意識する 。
    • 「できない問題を悩む時間」が最ももったいない 。自分の責任と権限の中で「責められるギリギリのところ」を見定め、とにかく短期間で結果を見せることに集中する 。
    • 上司から「大したことやってねえな」と言われるぐらいの小さい成功で十分 。
  • 実績が全て: 実績があれば、上司と対立して「弾き飛ばされた」としても、社内で「欲しい」という人が現れ生き延びることができる 。実績がないのにケンカをしても意味がない 。
  • ポジションの獲得: 「マネージャーの思う通りにやらなきゃいけない」のは組織として仕方がない 。あなたが正しいと思う改革を実行するためには、マネージャーや上層部のポジションを獲得する必然性がある 。
  • 仲間づくりの戦術: トップダウンが使えない一般社員は、小さな成功とその「波紋」によって仲間を増やす戦法しかない 。
    • 自分が投げたボール(成功)によって動いてくれた人を仲間として、その一つ一つのうねりを徐々に大きくしていく 。
    • その成功体験を自分の成功ではなく、現場のメンバーの成功として積み上げていく 。

今、一番駆逐したいことは

一番駆逐したいのは「Alt + Ctrl + Deleteキー3ついっぺんに押すというこのナンセンス」である

  • これは比喩であり、ITが作り出すナンセンス、すなわち「人間性に対するリスペクトが感じられないIT」を指す 。
  • ITは「人に優しくなければいけない」 。優しさや愛情が感じられる世界に到達したい 。
  • スマホで人生が豊かになったように、その「一般体験」を企業の情報システムもユーザーやお客様に対してもたらすべきである 。
  • 「IEのVer.8じゃないと動かない」といった社内システムや、「ActiveXがー」など、今あるナンセンスを排除するという文脈でDXを進めるべきである 。

登壇者プロフィール

NPO法人 CIO Lounge

友岡賢二

企業のDXを加速するため関西の製造業現役CIOやOBが集まって結成したCIO Loungeメンバー。悩みを抱える企業に寄り添い無償ボランティアでコンサルティングを実践中。本業では製造業のCIO/CDOとして、コミュニティでは「武闘派CIO」として多方面で活躍。

株式会社 AnityA(アニティア) 代表取締役 中野仁

国内・外資ベンダーのエンジニアを経て事業会社の情報システム部門へ転職。メーカー、Webサービス企業でシステム部門の立ち上げやシステム刷新に関わる。2015年から海外を含む基幹システムを刷新する「5並列プロジェクト」を率い、1年半でシステム基盤をシンプルに構築し直すプロジェクトを敢行した。2019年10月からラクスルに移籍。また、2018年にはITコンサル会社AnityAを立ち上げ、代表取締役としてシステム企画、導入についてのコンサルティングを中心に活動している。システムに限らない企業の本質的な変化を実現することが信条。

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