【動画】教えて!武闘派CIO :武闘派CIOが「ひとり情シス」にエール「成長のチャンスはこう作り、こう生かせ」──(後編)

 3月7日、武闘派CIOとして知られる日清食品ホールディングスCIOの喜多羅滋夫氏、CIO Loungeの友岡賢二氏、ロケスタ代表取締役社長の長谷川秀樹氏の3人が集結し、これからのキャリア設計を考える情シスたちの悩みに答える──というオンラインイベントが開催されました。

 前編に続いて後編の動画では、「ひとり情シスとしてどう生きるか」「武闘派CIOは、20代、30代、40代でどんな経験をしてきたのか」「武闘派CIOとしての生き方」の3つのテーマについて、ディスカッションの内容をご紹介します。

目次

ひとり情シスとしてどう生きるか

ディスカッションは、現代の情シス部門が抱える大きな課題の一つである「ひとり情シス」について深く掘り下げるところから始まりました 。

ひとり情シスは「ビジネス」に食い込め

  • 「ひとり情シス」は、人数が1人であっても情報システム部門の領域全体(右から左まで)を見なければならないため、もともと大変な状況にあります 。
  • そのため、アカウント登録からER対応、ネットワーク対応まで、多岐にわたる業務を一人でこなすという苦労があります 。
  • この状況を変えるための当面のゴールとして、登壇者は「二人情シスにすること」を提案しました 。
  • この目標達成のためには、「コストダウン」ではなく「会社の売り上げを伸ばすこと(儲かる話)」にフォーカスすべきです 。コストダウンには限界がありますが、売り上げや収益率を上げる話は次元が異なり、会社を成長させることができます.
  • 経営層に対し、その価値を説明し、「これをやるためには本当に(外部への委託という)オフをつけないと上には乗らないから、ここは外に出させてください」といった要望を通す必要があります 。

ひとり情シスは「できることを増やす」チャンス

  • ひとり情シスは、多岐にわたる業務を一人でこなす苦労がありますが、これをチャンスと捉えるべきです 。
  • 「ビジネス全てを私が理解してます」というレベルにまで到達した上で、何かが成し遂げられるように動くことが重要です 。
  • 「ひとり情シスでビジネスがよく分かりません」というのは、自身の関心がビジネスに向いていないことが問題であると指摘されました 。

ひとり情シスは外に仲間を作るべし

  • 組織のトップや経営層の中で、「物わかりのいい人(仲間)」を見つけ、サポートさせることは極めて重要です 。その人に「自分の価値を認めてもらう」ところまで、とにかく頑張りましょう 。
  • また、コミュニティに身を置くことの重要性も語られました 。
    • Microsoft、AWS、Googleなど、どのようなものでも構わないのでエンジニアのコミュニティに参加し、「外のものさし」で自分の立ち位置を確認するべきです 。
    • 自分一人で悩まず、同じような境遇の仲間を探し、意見交換することで楽になれます 。

常に「何のため」「誰のため」を問い続けよ

  • 仕事ができることの定義として、「何のためにやってるのか」「何を解決するためにやっているのか」という目的意識が非常に重要です 。
  • 特に大企業(エンタープライズ)では、役割が細分化されすぎてしまい、「何を作っているのかわからない」という状況に陥りがちです 。結果として、目的がわからなくなり、プロジェクトのログやスキルの羅列を仕事だと誤解してしまうことにも繋がります 。
  • 真に仕事ができるとは、自分が解決した問題が何で、それがどう上手くいったのか(あるいは行かなかったのか)を語れることです 。
  • 「私はこれができます」と語れる能力、つまり「人間をどのように形成していくのか」というライフプランが重要です 。

武闘派CIOは、20代、30代、40代でどんな経験をしてきたのか

登壇者それぞれのキャリアの経験から、各年代で意識すべきことが語られました

友岡氏の経験(東急ハンズ、ハンズラボ、メルカリなど)

  • 友岡氏は、名古屋の小さなSI会社に勤務した後、東急ハンズに入社しました 。
  • 東急ハンズでの10年間は、通販事業部長や会社設立(ハンズラボ)など、インフラから事業計画まで幅広い分野を経験し、自らの**「基礎を作った」時期でした 。
  • その後のメルカリでの経験では、「デジタルネイティブの組織」のオペレーションや考え方に大きな衝撃を受け 、「自分はまだまだバカだった」と感じ、改めて学び直したといいます 。

友岡氏が考える各年代で積むべき経験:

  • 20代: がむしゃらに働き、自分の名刺代わりに誇れる仕事(成功体験)を一つでも多くやりきること 。
  • 30代: 自分以外の人たちに頑張ってもらって結果を出すこと、つまりチームとして成果を成し遂げる経験 。
  • 40代: これまでの個別的な経験を一般化し、ITと関係ないこととの共通点を見つけることが求められます 。

長谷川氏の経験(外資系企業など)

  • 長谷川氏は、P&Gやフィリップモリスジャパンといった外資系企業でシステム開発・運用やITマネージャーを務め、2013年から日清食品ホールディングスCIOに就任しています 。
  • 長谷川氏は、サプライチェーンの整理や事業計画の策定など、システム開発だけでなく、多岐にわたるプロジェクトを経験しました 。

長谷川氏が考えるCIOの役割とキャリア:

  • 若いうちに全体を見渡す経験を持つことの重要性を強調しており、大企業の細分化された環境よりも、「比較的小さめのところでガンガン現場のヒリヒリ感を体験し成長していく」方がキャリアが伸びるという持論を持っています 。
  • 40代以降のトップの仕事は、いかに現場が気持ちよく働けるか(無駄なことをさせないか)という環境を整えることがCIOの仕事であるという認識を持つことだといいます 。

喜多羅氏の経験(コンサルティング、CIOなど)

  • 喜多羅氏は、アクセンチュアを経て東急ハンズの役員となり、ハンズラボを立ち上げた後、メルカリCIOを経て、現在はコープさっぽろなど複数社のCIOを務めています 。

喜多羅氏が考えるキャリアパス:

  • 自身が目指す姿について「なんでもわかっている人になりたかった」と語りました 。
  • ベンチャーの小さなSI会社でプログラミングから要件定義、運用までを一人で回す経験を積み、「この会社が終わっても生きていける」という自信をつけました 。
  • 大企業のIT部門にいた人よりも、小規模な現場からキャリアを積んだ人の方が、自ら工夫し修羅場を乗り越えてきた経験が豊富であるため、採用面接においても高く評価されることが多いそうです 。

武闘派CIOとしての生き方

  • 武闘派CIOたちは、「何のためにやっているんだっけ」という目的志向を常に頭の中で問い続けることが重要だと強調します 。
  • 武闘派CIOの生き方とは、目的を達成するためには戦うことも、謝ることも厭わないという姿勢です 。謝ることがゴールへの最短パスであれば、直角90度に謝るべきだと言います 。
  • 真の仕事の醍醐味は、一人ひとりがフルパワーで働き、それが足し算(または掛け算)となって組織の成果につながっていくことです 。
  • それを実現するためには、上司が部下の仕事をオーバーライトするような階層化された組織ではなく、フラットな組織であることが望ましいと提言されました 。

もし、あなたがこのディスカッションを聴いて「明日から何を変えるか」という目標が見つかったなら、その勢いが半減する前に、紙の上に書いてアクションに移すことが大切です

動画インデックス

・ひとり情シスとしてどう生きていけばいいのか【00:00:33】
 -ひとり情シスとして、どう戦略を立てるか
 -ひとり情シスは「ビジネス」に食い込め
 -ひとり情シスは「できることを増やす」チャンス
 -ひとり情シスは外に仲間を作るべし
 -常に「何のため」「誰のため」を問い続けよ

・武闘派CIOは、20代、30代、40代でどんな経験をしてきたのか【00:33:30】
・友岡氏の経験【00:33:40】
・長谷川氏の経験【00:36:27】
・喜多羅氏の経験【00:43:00】

・武闘派CIOとしての生き方【00:49:20】

登壇者プロフィール

日清食品ホールディングス株式会社

執行役員 CIO

喜多羅 滋夫

1989年、P&Gに入社。システムアナリストとして市場調査や営業支援に関連するシステム開発・運用プロジェクトに従事。インドネシア法人のITマネジャーを務める。2002年、フィリップモリスジャパンに入社。システム部門を統括。2013年より現職(2021年3月末まで)。情報システム部門改革を遂行し、2017年にIT総合賞、2018年に経済産業大臣賞を受賞。

ロケスタ株式会社

代表取締役社長

長谷川秀樹

企業のDXを加速するため関西の製造業現役CIOやOBが集まって結成したCIO Loungeメンバー。悩みを抱える企業に寄り添い無償ボランティアでコンサルティングを実践中。本業では製造業のCIO/CDOとして、コミュニティでは「武闘派CIO」として多方面で活躍。

NPO法人

CIO Lounge

友岡賢二

アクセンチュア株式会社を経て、2008年、株式会社東急ハンズに⼊社後、情報システム部⾨、物流部⾨、通販事業、オムニチャネル推進の責任者(執行役員)として改⾰を実施。2013年、ハンズラボ株式会社を⽴ち上げ、代表取締役社⻑に就任(東急ハンズの執⾏役員と兼任)。2018年、株式会社メルカリ執⾏役員CIOに就任。2019年、ロケスタ株式会社代表取締役社⻑に就任(現任)。現在、プロフェッショナルCIO/CDOとして、コープさっぽろCIOなど複数社のCIOに従事。著書に「Slackデジタルシフト10の最新事例に学ぶ、激動の時代を乗り越えるワークスタイル変革(できるビジネス)」(インプレス刊)がある。

株式会社 AnityA(アニティア) 代表取締役 中野仁

国内・外資ベンダーのエンジニアを経て事業会社の情報システム部門へ転職。メーカー、Webサービス企業でシステム部門の立ち上げやシステム刷新に関わる。2015年から海外を含む基幹システムを刷新する「5並列プロジェクト」を率い、1年半でシステム基盤をシンプルに構築し直すプロジェクトを敢行した。2019年10月からラクスルに移籍。また、2018年にはITコンサル会社AnityAを立ち上げ、代表取締役としてシステム企画、導入についてのコンサルティングを中心に活動している。システムに限らない企業の本質的な変化を実現することが信条。

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