【動画】教えて!武闘派CIO :アフターコロナを見据えた「情シスのキャリア設計」どうすればいい?(前編)

 3月7日、武闘派CIOとして知られる日清食品ホールディングスCIOの喜多羅滋夫氏、CIO Loungeの友岡賢二氏、ロケスタ代表取締役社長の長谷川秀樹氏の3人が集結し、これからのキャリア設計を考える情シスたちの悩みに答える──というオンラインイベントが開催されました。

 前編の動画では、「コロナ禍でIT部門のあり方はどう変わったのか」「これまでのどんな経験がCIOとして仕事をする上で役に立っているか」「教養や知識をどうやって身につけてきたのか」「どんな人にCIOのバトンを渡したいか」の4つのテーマについて、ディスカッションの内容をご紹介します。

目次

イベント概要

 コロナ禍によって働き方が大きく変わった2020年は、「ITなくして企業が存続できないこと」が証明された1年でした。特にコーポレートIT人材のニーズが高まっており、ビジネス課題をITで解決するためのスキルを持つ人材は今、引く手あまたの状況です。

 このチャンスに、コーポレートIT分野で本質的な改革を進め、自らの価値を上げていくためには、どのようなスキルセットを身につけ、どうやって実力をつけていけばいいのでしょうか。また、企業のIT変革をリードするために必要な素養とはどのようなものなのでしょうか。

 本イベントでは、武闘派CIOとして知られる日清食品HD CIOの喜多羅滋夫氏、CIO Loungeの友岡賢二氏、ロケスタ代表取締役の長谷川秀樹氏 をお迎えし、AnityA代表取締役の中野仁をモデレーターに、コーポレートIT人材のキャリア設計についてディスカッションします。

登壇者自己紹介と1年間の変化

コロナ禍によって「ITなくして企業が存続できないこと」が証明された2020年を経て、IT人材のキャリア設計が重要課題となる中、登壇者はそれぞれの経験や、この1年で感じた変化を語りました。

喜多羅滋夫氏(日清食品HD 執行役員 CIO)

喜多羅氏は、P&G、フィリップモリスジャパンを経て、2013年に日清食品ホールディングスに初のCIOとして入社し、2021年3月末で退任予定です。

  • キャリアの原点: P&Gでシステムアナリストとしてキャリアをスタートしました 。インドネシアのITマネージャーや日韓のB2C責任者などを務めましたが、「IT部門長だけに絶対になりたくなかった」ためP&Gを辞めました 。
  • 「武闘派」の由来: 高知県で龍馬パスポートを昇格させた際、思いつきで肩書きを「武闘派」と書いたのが始まりとのことです 。
  • 1年間の変化: コロナ禍によって、IT部門の優先順位が上がり、事業継続テレワークといった緊急対応に焦点が当たりました 。この状況で、社会に流れる情報に対し、何が正しくて何が間違っているかを自律的に判断し、行動するスキルの重要性を感じたといいます 。

友岡賢二氏(CIO Lounge)

友岡氏は、アクセンチュアを経て東急ハンズに入社し、情報システム部門、物流部門、通販事業などの責任者を歴任。その後、ハンズラボ、メルカリCIOを経て、現在はコープさっぽろなど複数社のCIOを務めています

  • キャリアの転機: 最初は技術が好きで電機メーカーにSEとして入社しましたが、人事と喧嘩し、SEに配属されました 。海外での仕事に関心があり、5年目でドイツへ赴任しました 。
  • 「武闘派」の片鱗: 帰国後、上司と対立し仕事から完全に外される、希望の部署への転職がバレて国外追放(イギリスへ)になるなど、波乱のキャリアを歩んでいます 。
  • 1年間の変化: ITリテラシーが劇的に向上し、役員会でクラウドサービスについての質問が出るなど、社内の意識が変わったことが嬉しい変化だと語りました 。

長谷川秀樹氏(ロケスタ 代表取締役社長)

長谷川氏は、外資系でのキャリアを経て、現在はコープさっぽろを含む複数社のCIOやアドバイザリーを担っています

  • ライフスタイル: コロナ禍の1年間で、北海道と東京の二拠点生活をスタートさせ、「旅をしながら働く」という目標の第一歩を踏み出しました 。
  • 価値観の変化: 会社からの指示に縛られず、自分の価値観で生きるというスタイルが特徴で、会社からの指示に縛られない生き方ができるようになったことが大きな変化だと語りました 。

中野仁氏(AnityA 代表取締役)

中野氏はモデレーターを務めました。メーカーからWebサービス企業へ、営業職からエンジニアへなど異色の経歴を持ち、現在はラクスルで働きながら、自社(AnityA)でもコンサルティング活動を行っています 。

  • 業務経験: 社内システムを中心に、システム刷新、組織立ち上げを3回経験。企画から運用、インフラまで幅広く担当しました 。
  • 1年間の変化: 以前はチャットでのコミュニケーションもおぼつかなかった人たちが、コロナ禍で「バリバリチャットツールを使って」コミュニケーションするようになるなど、ITリテラシーの向上が見られたと語りました 。

ディスカッションテーマと洞察

テーマ1:コロナ禍でIT部門のあり方はどう変わったのか

  • 「なんちゃってDX」の一掃: コロナ以前の「DXごっこ」は企業が余力を失ったことで軒並み終了し、事業継続リモートワーク対応といった本質的な課題に焦点が当たりました 。
  • IT部門の立場向上: テレワーク対応など、ITがなければ事業が立ち行かない状況となり、日々のオペレーションを支えるITサービスが重宝され、IT部門の立場が向上しました 。
  • IT部門のあり方への危惧: 喜多羅氏は、焦点がインフラやベースサービスにばかり集まり、ビジネスプロセスの見直しといった事業変革まで踏み込みきれていない現実があることを危惧しました 。
  • 変化への対応力: 事前に準備(助走)していたIT部門と、そうでないIT部門の間で、パンと波に乗れたかどうかの差が生まれたと分析されました 。また、柔軟な対応ができる若手社員のITリテラシーが、年長者の上司を助ける場面が増え、若い世代が「自分たちが必要とされている」とエナジャイズされた側面もあります 。
  • 勤怠管理のグレーゾーン: リモートワーク下で、PCログによる管理など、従業員の行動監視に関する議論が起こりましたが、登壇者は、生産性の低い議論を避け、事業にとってより大事なアジェンダにエネルギーを向けるべきだと主張しました 。

テーマ2:これまでのどんな経験がCIOとして仕事をする上で役に立っているか

登壇者は、CIOとして成功するために、以下の2つの要素が重要だと語りました。

  1. 非IT部門とのコミュニケーション:
    • ITリスクをそのまま語るのではなく、相手の事業リスクに置き換えて説明する能力が重要です 。
    • 20代後半でインドネシアのITマネージャーだった喜多羅氏は、現地の社長から「そんなこと言ってわかるか」と言われ、説明の仕方を根本的に変える必要に迫られた経験を語りました 。
  2. 人を巻き込む力と対立の回避(または乗り越え方):
    • 会議で総スカンを食らうような状況でも、対立を恐れず、ロジックや会社のビジョンを盾に議論し、最終的に相手を「ロックオン(握る)」する(納得させる)能力が求められます 。
    • 共通のゴール(コモンゴール)を意識させ、最終的には組織力を上げていくという大前提を崩さないことが大事です 。

テーマ3:教養や知識をどうやって身につけてきたのか

  • 好奇心と学習: 知識や教養の源泉は、世の中に対する好奇心であり、それが「相手を理解したいと思う心」につながります 。
  • 模倣の重要性: 経営陣の議論や他のCIOの成功事例を「真似る」「パクる」ことは、自分でゼロから作り出すよりもハードルを下げ、問題を小さく分解するための重要な技術です 。
  • 実践的な学習: 今はクラウドサービスなどを活用して「疑似体験」ができる時代になりました。ITだけでなく、ファイナンスやビジネスの知識も、これらのツールを使って体験と勉強を同時に行うことで、習得を加速させるべきです 。
  • 変化を楽しめる姿勢: ITの世界は、3ヶ月前の正解が次の四半期には正解ではないというくらい進化が早いため、変化を苦痛ではなく楽しめる姿勢が必須要件だと語られました 。

テーマ4:どんな人にCIOのバトンを渡したいか

  • 能動的な姿勢: 「上がアホだから俺がやるしかない」という、問題意識から「俺がやるしかない」と行動し、権限を奪い取るような姿勢を持つ人にバトンを渡したい 。
  • 若手への提言: 大企業の一つの歯車になるよりも、小規模な会社や部署で責任者になり、「自分で決める訓練」を積み、ビジネスインパクトを出す経験を積む方が、キャリアを伸ばす上で重要であると提言されました 。
  • スキルセット: CIOになるには、ITだけでなく、ビジネス、ファイナンス、人間への教養など、ドメインを広く取り、多角的に物事を理解できることが求められます 。

動画インデックス

・喜多羅さん自己紹介【00:04:40】
・友岡さん自己紹介【00:09:07】
・長谷川さん自己紹介【00:14:45】

・テーマ1:コロナ禍でIT部門のあり方はどう変わったのか【00:23:30】
・テーマ2:これまでのどんな経験がCIOとして仕事をする上で役に立っているか【00:41:13】
・テーマ3:教養や知識をどうやって身につけてきたのか【01:18:00】
・テーマ4:どんな人にCIOのバトンを渡したいか【01:31:54】

登壇者プロフィール

日清食品ホールディングス株式会社
執行役員 CIO

喜多羅 滋夫

1989年、P&Gに入社。システムアナリストとして市場調査や営業支援に関連するシステム開発・運用プロジェクトに従事。インドネシア法人のITマネジャーを務める。2002年、フィリップモリスジャパンに入社。システム部門を統括。2013年より現職(2021年3月末まで)。情報システム部門改革を遂行し、2017年にIT総合賞、2018年に経済産業大臣賞を受賞。

NPO法人 CIO Lounge

友岡賢二

企業のDXを加速するため関西の製造業現役CIOやOBが集まって結成したCIO Loungeメンバー。悩みを抱える企業に寄り添い無償ボランティアでコンサルティングを実践中。本業では製造業のCIO/CDOとして、コミュニティでは「武闘派CIO」として多方面で活躍。

ロケスタ株式会社 代表取締役社長

長谷川秀樹

アクセンチュア株式会社を経て、2008年、株式会社東急ハンズに⼊社後、情報システム部⾨、物流部⾨、通販事業、オムニチャネル推進の責任者(執行役員)として改⾰を実施。2013年、ハンズラボ株式会社を⽴ち上げ、代表取締役社⻑に就任(東急ハンズの執⾏役員と兼任)。2018年、株式会社メルカリ執⾏役員CIOに就任。2019年、ロケスタ株式会社代表取締役社⻑に就任(現任)。現在、プロフェッショナルCIO/CDOとして、コープさっぽろCIOなど複数社のCIOに従事。著書に「Slackデジタルシフト10の最新事例に学ぶ、激動の時代を乗り越えるワークスタイル変革(できるビジネス)」(インプレス刊)がある。

モデレーター:株式会社 AnityA(アニティア) 代表取締役
中野仁

国内・外資ベンダーのエンジニアを経て事業会社の情報システム部門へ転職。メーカー、Webサービス企業でシステム部門の立ち上げやシステム刷新に関わる。2015年から海外を含む基幹システムを刷新する「5並列プロジェクト」を率い、1年半でシステム基盤をシンプルに構築し直すプロジェクトを敢行した。2019年10月からラクスルに移籍。また、2018年にはITコンサル会社AnityAを立ち上げ、代表取締役としてシステム企画、導入についてのコンサルティングを中心に活動している。システムに限らない企業の本質的な変化を実現することが信条。

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