一般社団法人エンタープライズIT協会は、8月4日にオフラインイベント「成長企業のITSM(ITサービスマネジメント)10年史」を開催しました。本記事では、そのセミナーの概要と主要なポイントを抜粋してご紹介します。
このイベントでは、急成長を遂げた企業の情報システム部門が、過去10年間でどのように組織とIT環境を最適化してきたか、その変遷が語られました。参加者は、企業の拡大期に直面する課題から、成熟期における効率化の取り組みまで、実践的なノウハウを学びました。
目次
急拡大期におけるIT部門の課題
企業の急成長は、喜ばしい一方で、IT部門には深刻な課題をもたらします。参加者は、以下のような問題に直面した当時の状況を振り返りました。
- ITインフラの限界: 社員の急増に、既存のネットワークやサーバーが対応しきれず、業務に支障をきたす状況が発生。
- IT資産の管理不足: 誰がどのPCを使っているか把握できず、PCの在庫や所在が不明になるなど、資産管理が混沌とした状態に。
- 属人化する問い合わせ対応: 問い合わせ対応が個人のスキルに依存し、対応品質が安定しないため、効率化が急務でした。
課題解決に向けた変革と最適化
これらの課題を乗り越えるため、IT部門は以下のような取り組みを進めてきました。
- 基盤の再構築: 会社の成長に耐えうるよう、ITインフラ全体をゼロから再構築する一大プロジェクトを実行。
- 見える化の徹底: 物理的な棚卸しから始め、資産管理ツールを導入することで、IT資産の「見える化」を達成。
- 問い合わせ対応の仕組み化: チケット管理システムやチャットツールを適切に使い分け、効率的で安定したヘルプデスク体制を構築。
- コスト効率と品質の向上: 企業の成長が安定期に入ると、コスト最適化が重要なテーマに。AIなどの新しい技術も活用し、予算を抑えながらサービス品質を高める工夫が語られました。
内製化と外部委託の最適なバランス
イベントでは、IT部門が持続的に成長していく上で重要な「内製化」と「外部委託」のバランスについても触れられました。システムの構築・運用において、外部の専門知識を借りつつも、重要な部分は社内にノウハウを蓄積していくことが、将来の「IT負債」を抱えないために不可欠であるという点が強調されました。
結論:変化を続ける組織文化の重要性
企業のIT部門は、成長フェーズに応じて常に変化する課題に対応し続ける必要があります。このイベントを通じて、変化を円滑に組織に浸透させるための工夫や、外部の力をうまく活用しながらコアな部分を自社で担うバランス感覚が、持続的なIT運用には欠かせないというメッセージが伝えられました。