MIXIとエンタープライズIT協会は2025年2月20日、「みんなで話そう、コーポレートIT」と題したイベントを開催しました。会場となったMIXI本社には、情報システム部門の担当者など約30名が参加。参加者同士で課題を共有したり、特定のテーマについて議論したりしました。ここではイベントの様子を紹介します。
社内システムの最適化、DXの推進、AI導入による効率化…。コーポレートITを統括する情報システム部門の役割は年々多様化しています。そんな中、情報システム部門はどのような組織を目指したらよいか。どのような価値を提供できるようにしたらよいか。さらに、優秀な人材をどう確保するか。これらの課題と常に向き合いながら、多様な業務を推進することが求められるようになっています。
そこで今回のイベントでは情報システム部門の担当者などを招き、業務の悩みや課題を参加者同士でディスカッションしました。より良い会社や組織、さらには自分自身にとって働きやすい環境について議論しました。
AIなどのツール導入が目的化していることが課題
イベント冒頭、MIXI はたらく環境推進本部 コーポレートエンジニアリング部 部長の加藤徳英氏が講演しました。「MIXIでこんなことやってます/こんなこと困ってます」と題し、MIXIにおける情報システム部門の役割や課題などを説明しました。加藤氏は部の現状について、「社員や業務委託の協力会社などを含め、60~70名のスタッフがいる。コーポレートエンジニアリング部とコーポレートITサービス部が存在し、セキュリティ対策やガバナンス体制の構築、レガシーシステムの保守・運用、さらにはAIの活用促進など、いわゆる情報システム部門の役割を担っている。11ある子会社のシステム運用や支援を手掛けているのも部の特徴だ」などと現状を紹介。その上で、「MIXIという会社はここ数年で急成長してきた。そのため、これまではシステムの運用や体制構築などの業務に重点を置いてきた。しかしこうしたフェーズが一段落し、今後はDXに本腰を入れる予定だ」(加藤氏)と、今後はDX推進に注力する方針を示しました。

一方、悩みや課題にも言及します。「当社に限った話ではないが、多くの企業がDXを進めるものの、ツールを契約するだけにとどまっている。その先を描けない企業は少なくない。社員の意識改革を進めない限り、DXはツール導入で終わってしまう」(加藤氏)と指摘。AIについても同様に、「AI導入が目的化してしまう企業が目立つ。本来の目的ではなく、手段の選定が議論の中心になりがちだ。売上アップなどの目的なしにAIを導入しても効果を見込めない。情報システム部門の多くが、同じような状況に陥っているのではないか」(加藤氏)と考察しました。その他、「キャリアアップを描きにくい」「優秀な人材を獲得できない」など、多くの情報システム部門が抱える課題にも触れました。
参加者同士で課題をディスカッション
では、企業の情報システム部門は今後、何をどう改善したらよいのか。今回のイベントでは会場に6つのテーブルを用意し、参加者を5~6名ごとに分割。各テーブルで参加者同士が話し合う場を設けました。DX推進やAI活用、採用活動などのテーマに対し、参加者同士が経験や考えを共有しました。なお、各テーブルにはMIXIのはたらく環境推進本部のスタッフも同席。参加者はMIXIの取り組みを参考にしつつ、議論を深めていました。
ディスカッションでは2つのテーマを用意。1つ目は「運用課題」。具体的にはDXやAIへの対応、ツールとコスト問題、良い委託先やBPOの見つけ方といった運用課題から選び、15分間ディスカッションしました。その後、各テーブルに同席したMIXIのスタッフがディスカッションした内容を発表しました。

コーポレートエンジニアリング部 バックオフィスグループ マネージャー 上野桂子氏は、「増え続けるツールとコストをどう見直すかを議論した。情報システム部門が関与しないままツール導入が進むケースが増え、導入の可否判断が難しくなっている。どうバランスを取るのかも含め、ツールの採択基準を厳密にしたらよいのではという声があった。一方のコストは、数字で可視化することが必要ではないか。トップダウンでコストカットに取り組んだ方がよいという意見が出た」と述べました。
コーポレートITサービス部 部長 朝倉文彦氏は、「AIについて議論した。経営者は『AIを使え』と言うが、どう効果を上げていくのかを考えることこそ本質だ。AIを普及・浸透させるには、情報システム部門のスタッフがAIの理解を深めるだけでは不十分。全社展開を想定した研修や教育体制を検討することが大事という意見があった」と発表しました。
イベントのモデレーターを務めたエンタープライズIT協会 代表理事の中野仁氏は、2名の発表を受けてコメント。「情報システム部門にとってAIが大きな関心事になりつつあるのは言うまでもない。現在は『導入しよう』という経営層の声が多いが、今後は『生産性を上げろ』という経営層の声が増えるに違いない。AIを使って効果を上げる企業が増えるにつれ、経営層がAIに求めることも変化する」と指摘しました。

2つめのテーマは「人と組織の課題」。採用、キャリアパス、メンバーの疲れ具合といった3つの人と組織の課題の中から選び、テーブルごとに15分間ディスカッションしました。1つめのテーマのときと同様に、各テーブルに同席したMIXIのスタッフがディスカッションした内容を発表しました。
コーポレートエンジニアリング部 SOCチームリーダー 阿部翔氏は、「採用の課題を解決するには『自分より優れた知り合いをリファラル採用するしかない』という結論でした。知り合いなので話しやすい半面、業務内容のミスマッチをどう解消するかがポイントになるのではという意見があった。キャリアパスは、コーポレートITの業務の幅が広すぎることで描きにくいという声があった。いろいろな業務に関わる中、最終的なゴールを決めるのは難しいという意見もあった」と発表しました。
キャリアパスについて議論するテーブルが多く、さまざまな意見が挙がりました。具体的には、優秀な人材を獲得できないといった課題はもちろん、どのようなキャリアパスを描けばよいのかのロールモデルがないといった声などがありました。さらに、情報システム部門の業務領域が多岐にわたるため、どのような領域の専門性を突き詰めればよいのか分からないという声も少なくありませんでした。その他、「即戦力を獲得できないならアルバイトなどを短期雇用して試すのがよい」「若手社員に大きな仕事を任せてモチベーションアップを図るのがよい」「自分ならではの強みを活かす担当領域を模索するのが望ましい」などの声もありました。

イベントを通して、多くの参加者が似たような課題を抱えていることが浮き彫りとなりました。ディスカッション中に他の参加者の発表に共感したり、同じ悩みを抱える人同士で盛り上がったりするシーンがあちこちで見られました。もっとも、ディスカッションする時間が限られ、参加者同士で十分話し合えない様子も見られました。
今回のイベントは今後も様々なテーマで実施する予定です。ディスカッションする時間やテーマなどを見直し、多くの人に役立つ内容を盛り込んでいきます。さまざまな立場の人の考えを聞くだけでも参考になるため、気になる人はぜひ一度、参加してみてはいかがでしょうか。
なお、MIXIのはたらく環境推進本部では人材を募集しています。業務内容や募集要項などを以下に記しました。興味を持った方はぜひ応募ください。
【MIXI GROUP RECRUIT】



【イベントに参加したMIXIのスタッフ】

コーポレートエンジニアリング部 部長 加藤徳英氏
2006年12月ミクシィ(現MIXI)へ中途入社。前職ではインターネットプロバイダーにてネットワークエンジニアを経験。SNS『mixi』のインフラ・購買を担当し、2014年よりはたらく環境推進本部 社内IT室に。2020年、部室長に就任。

コーポレートエンジニアリング部 バックオフィスグループ マネージャー 上野桂子氏
2011年8月中途入社。2回の育休を挟みながら、決裁システム(X-point)管理、入退社・異動情報のとりまとめ等の雑多な実務を手掛けた後、ヘルプデスクチームのリーダーを担当した。現在は部内の発注事務統括と、社内のソフトウェア調達分野を担当。

コーポレートITサービス部 部長 朝倉文彦氏
2016年1月 中途入社。前職では大手通信キャリアにてネットワークエンジニアを経験。入社後はインフラ領域を中心にヘルプデスク体制の構築、本社移転プロジェクト等に従事。2023年にコーポレートITサービス部の部長に就任。

コーポレートエンジニアリング部 SOCチームリーダー 阿部翔氏
SIerでのプログラマー、システムエンジニアを経て、2019年ミクシィ(現MIXI)入社。mixirt、SOCなどセキュリティ関連業務の他、部署内作業の自動化、SaaS運用、子会社支援などを経験。現在はアカウントデータ基盤(DataHub)の開発取りまとめとSOCなどセキュリティ関連業務を兼務。

コーポレートITサービス部 インフラチームリーダー 岡崎誠氏
2022年3月にミクシィ(現MIXI)へ中途入社。情シス未経験でWeb系の開発知識をもとにSaaS関連の運用部隊。アカウントの発行・棚卸し・PMI時のツール統合など担当。直近ではSaaSの付随されるAI機能の検証や展開準備も担当。現在はオフィスインフラ、SaaSを運用するチームのリーダーを担当。

コーポレートITサービス部 ハーモニーチームリーダー 西本聖氏
SIerにてSAPの保守運用業務に従事したのち、スポーツ業界でイベントディレクターとしての経験を積む。2020年10月にミクシィ(現MIXI)に入社後、SaaSの運用業務に携わり、複数の子会社のPMIを担当。現在は、子会社PMIおよび全社横断的なプロジェクトの取りまとめを行い、国内外のグループ会社のガバナンス方針の検討業務に従事。

コーポレートエンジニアリング部 プラットフォームチーム リーダー 那須大樹氏
1社目SIer、2社目SESを経て2019/4中途入社。前職でインフラエンジニアを経験。入社後は端末管理領域を中心にオンプレ/IaaSや認証基盤管理、業務委託体制の構築、PMI、SOCなどに従事。主な実績としては社内ITにて利用するIaaS環境の構築、ADからEntraIDをメインとして端末認証基盤の移行、MDM/EDRの全社導入、Autopilotの構築、また直近では社内向け生成AI環境の提供を実施。

コーポレートITサービス部 事業サポートグループ マネージャー 堀内佳苗氏
1社目は事業会社の社内SE、2社目は事業会社の「ひとり情シス」を経て、2018年 ミクシィ(現MIXI)入社。ヘルプデスクの体制作りをはじめ、入退社関連/本社移転/子会社PMIなどを経験。1年の育休を経て現在はヘルプデスクチームの運営、子会社支援、ハードの購買管理、部署内のオペレーション業務を行うグループのマネージャーを担当。